マイクロソフトは訴えないんですか?
特許侵害で「一太郎」、「花子」に製造・販売中止と廃棄命令
(IT Pro ニュース)
「一太郎」と「花子」が販売差し止め、ジャストシステムは控訴を表明
松下アイコン訴訟、東京地裁で判決
(Internet Watch)
このニュースを見て、「なぜジャストシステムを訴えたのか?」「マイクロソフトは訴えないのか?」と思ってしまいました。
今回の訴訟の論点では、クリックする対象が「アイコン」かどうかという非常に細かいところのようです。これは、松下電器が出願した特許の請求項(特許のどういう部分を権利化したいのかを説明する文)で、押される対象物が「アイコン」になっているためです。今回の判決で、「一太郎」や「花子」のツールバーに書かれているボタンは、特許に書かれている「アイコン」に該当する、との判断がなされたようです。
H17. 2. 1 東京地裁 平成16(ワ)16732 特許権 民事訴訟事件
(裁判所 - 知財権判決速報)
私も過去に仕事で特許を書いたことがあるので、こういう判例は読んでいて「なるほど〜」と思ってしまいました(^^;)
問題の特許は、Windowsで言う「状況依存ヘルプ」に関するものと思われます。Internet Watchの記事によれば、ジャストシステム側は、
「Windows標準の機能とほとんど変わらず、一太郎が特許に抵触するのであれば、多くのソフトが特許侵害となってしまう」
と話しています。その話の通り、状況依存ヘルプ自体はWindowsがOSレベルでサポートしている機能であり、この機能を使用しているソフトは数多く存在します。
今回争点になっている「状況依存ヘルプ」は、Windowsでも使用しているところがあります。例えば、コントロールパネルにある設定(どれでも良い)を開くと、ダイアログボックスの右上に「?」ボタンがあり、これをクリックした後に、ダイアログボックス内のボタンやチェックボックス等をクリックすると、説明が表示されます。
見方によっては「?」ボタンもアイコンに見えなくもなく、マイクロソフトのほうが派手に抵触しているように思えます。
ではなぜ、松下電器はマイクロソフトでは無くジャストシステムを訴えたのか?私は、こういう理由があるの思っています。あくまで私の独断と偏見なのですが・・・
1.松下電器は自社のパソコンにプレインストールするためのOS(Windows)をマイクロソフトから購入しているため、訴訟によって購買条件や契約に悪影響がでる懸念がある
2.OSの購買に関してマイクロソフトと契約を結んでおり、その契約に「非係争条項(NAP:non-assertion of patents)」があるために、訴えたくても訴えられない
【参考記事】
米Microsoft,公取委の排除勧告に異議を表明
(IT Pro ニュース)
米マイクロソフト、NAP破棄を求める公取委の勧告を応諾せず
(CNET Japan)
3.マイクロソフトのような利害関係が無く、訴訟に勝った場合に得られる利益がそこそこ期待できるのが、たまたまジャストシステムだった
特許侵害でどこを訴えようと、それは権利保持者の自由なのですが、まあなんと言いますか、「弱いものイジメ」に見えなくもありません・・・(^^;)
「弱いものイジメ」に見えるというのは、
・ジャストシステムの特許侵害が特に悪質であるように見えない
・ジャストシステムがクロスライセンス契約等の取引が困難なことを分かった上で、あえてジャストシステムを提訴することに疑問を感じる(本当に困難かどうかは私にも分かりませんが・・・)
からです。ちなみに「クロスライセンス契約」とは、異なる特許を持つ会社間で互いの特許を相互利用できるようにする契約であり、技術提携や利害関係の調整等の目的で使われるものです。一般に、特許を多く保有する大手メーカー同士で行われています。
「ソフトウェアを1つ作ると100の特許に抵触する」と誰かが言っていたように、ソフトウェアを作っている会社や技術者にとっては、決して他人事ではないんですよね。
あー怖い怖い・・・
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コメント
TBありがとうございました。
ネット上では「オノレ松下め」という声が圧倒的なのに、新聞は「松下の知財戦略」みたいな話に流れ、企業、学校は「とりあえず一太郎購入は見送り」...
今、問題だと思っているのは、
・マスコミは松下グループの顔色をうかがっているから公平な分析、報道をしていない
・技術者の観点からの冷静で論理的な批判が少ない
です。
投稿: つきっつ | 2005.02.04 13:13
>つきっつさん
いえいえ、こちらこそありがとうございます。
私のほうからもTBしておきますね。
知財戦略と言ってしまえば、まあそれまでなんですよね。
まあSCOの知財戦略はどうかと思いますが・・・(^^;)
今までの訴訟の過程で和解の申し入れがあったそうですが(下記記事)、一体いくらぐらいの金額を提示したのかがちょっと気になります。
「ジャストシステム、東京地裁での敗訴を受け会見〜ただちに控訴、製品販売も継続」(PC Watch)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0201/just2.htm
投稿: komat | 2005.02.05 01:05
あ...TBしてくださった方のサイトからkomatさんのところを見つけたのに、先にTBいただいたとカンチガイしてしまいました。失礼しました。
ジャストシステムとしては、和解すると特許侵害を認めることになると思って頑張ってしまったのかもしれませんが、上に示してくださったリンクの記事内にある「判決前に事前に手を打つことができなかったのか」ということばを今になって噛みしめているかもしれませんね。
投稿: つきっつ | 2005.02.05 15:07
>つきっつさん
やはりそうでしたか(^^;) TBした覚えが無かったので変だなと・・・
投稿: komat | 2005.02.05 21:51